剣道部歌『聖き北斗(きよきほくと)』

作詞:坂田 常太郎(S5年卒) 作曲:財部 均 編曲:丸山 玲子


1 
洛西の里春深み 人や南柯に迷うとき 
愛宕颪の雄叫びに 心を鍛う健児の 
血潮一度高鳴らば 剣を抜いて我は起つ
  
2 
戦雲こむる吉田山 男の子の気迫溢れては 
征馬の鳴くに止み難く 雄図を思い嘗胆の 
悲壮の曲を奏でつつ 覇業を期して我進む
  
3 
双ヶ丘の夕暮れや 紅深く陽は落ちて 
静寂の闇のこむる時 剣の雄叫び著くして 
覇権の旗を守るべき 男の子の誓い火と燃ゆる
  
4 
剣の影に霜冴えて 道を修むや男の子の気 
梵音訪う夕空に 我らの弛まぬ「えい、おう」や 
落霞の光我浴びて 陣螺の音色に血は沸きぬ
  
5 
聖き北斗の瞬きに 白銀の剣仰ぎては 
多感の児等は天翔り 妖雲拂う意気のあり 
高楼春の夢虚し 感激の日に我生きむ
 

S43卒長谷川先輩による剣道部歌考察(剣友3号より引用)

●作詞・編曲●

この詩は、当大学の前身である衣笠校を1930年(昭和5年)に卒業された 
「坂田常太郎先輩」の在学中(18歳頃)の作品で、編曲に貢献してくださったのは 
丸山剣友会事務局長の奥様です。

●語句注釈●

南柯(なんか) 
中国の古い夢物語に登場する言葉で、文字通りの意味は「南の方角に、さし出た木の枝」です。 通常『南柯の夢』として用いられ栄枯盛衰のはかなさ、転じて「夢」、「儚いこと」を意味します。

愛宕(あたご) 
京都市西北にそびえる愛宕山{あたごさん}のことで平安建都以前からの信仰の山です。 
三重県の民謡「伊勢参り」では「お伊勢七たび、熊野へ三たび、愛宕山へは月参り」と 
庶民の愛宕山に対する強い信仰・憧れを歌っています。

吉田山(よしだやま) 
白川通り今出川交差点近くにある、吉田山のことです。 
大正ロマンの時代、遠征の前になると剣道部の先輩方は東山山麓「哲学の道」付近を逍遥し、 
南禅寺門前にて「湯豆腐」を賞味されたそうです。 
豆腐の白色が「勝ち星」に結びつくというジンクスが存在していたのでしょう。

双ヶ丘(ならびがおか) 
桜の名所である御室仁和寺の南方に、三つの小さな丘が連なっています。 
兼好法師は、この丘の麓に庵を結んで、随筆「徒然草」に「ならびがおか」と書いています。

梵音(ぼんのん) 
本来の発音は「ぼんおん」で、「読経の声」を意味します。 
陣螺(じんら) 
昔、戦場で吹き鳴らされた法螺貝のことです。
  
北斗(ほくと) 
「北斗星は、宇宙空間にあるもの全てを支配している」という東洋の思想があり 
昔から神聖な信仰の対象になっています。